本研究は、溶液の振動モードを非共鳴5次光学過程の実験(2Dラマン分光)で解析を行うための、基礎理論の整備を目的とする。研究は、まず、振動モードの非調和振動子性について行う事から始めた。モデルとして量子ブラウン運動系を考え、非調和性を摂動論的に考慮し、2n+1次の光学過程に対する応答関数を、経路積分法を用い解析的に導出した。結果を用いて、CS2の5次の実験を、数値的に解析し、回転モードに弱い非調和振動子性が含まれる可能性を示唆した。さらに5次の応答関数の表式を用い、非調和振動子性を温度や散逸といった他の効果から分離して測定可能とする、周波数領域の共鳴5次光学過程のレーザー実験を提唱した。また、Fokker-Planck方程式を用い、Morseポテンシャル系の振動モードの2Dラマンシグナルを計算し、温度効果等を調べた。これらの研究は、分子の振動モードに対するもので、さらに電子の励起状態まで含めた、配位した2つの非調和振動子についての、5次の光学過程について研究を行った。まず、5次の共鳴光学過程に関する応答関数を導出した。次に1、3次の応答関数を用いて、線形吸収、ポンププローブ、フォトンエコー等のスペクトルを数値計算計算し、非調和振動子性がスペクトルにどの様な影響を与えるかを研究した。これらの結果は、Journal of Chemical Physics5報、Chemical Physics Lett 2報、Physical Review EとChemical Physics、それぞれ一報の論文としてまとめ掲載された。また、調和振動子系の周波数が揺動している系の5次光学過程の研究について、さらに一報論文を執筆中である。 研究成果は、118ページの報告書としてまとめられた。
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