本基盤研究(C)では疑縮系の全ハミルトニアンを仮定した上で溶質-溶媒間相互作用に任意の非線形性を認めて、電荷移動反応速度定数を定式化し、数値計算により実験値と比較する事を最終目標においた。平成9年度の研究活動は、凝縮系の電荷移動反応のような、量子論的自由度と古典論的自由度が混在している古典量子結合系の振動非断熱性を見積もるために、前年度に提案・定式化した運動方程式に基礎をおいた量子化法を用いて、振動非断熱性によって引き起こされる非平衡性と反応エネルギーの集中と散逸的移動との数値的取り扱いを実行した。 (1)文献調査と実際的な問題設定: 平成8年度までの研究をもとに理論・実験両面から調査して、従来の取り扱いの問題点を把握し、本理論での数値予測と比較すべき凝縮系における電荷移動反応に関する関連論文を検討した。 (2)古典量子結合系の運動方程式に基づく量子化法: 前年までに提案・定式化した凝縮系の化学反応量子動力学を対象とする運動方程式に基づく量子化法をさらに発展させた。本方法では量子力学的揺動に支配された確率微分運方程式を導入した。最終年度である本年度は、まず、前半で本理論を数値的に実証するため、昨年来開発してきた汎用性コンピュータ・プログラムを本予算で購入したUNIXコンピュータ等を利用して実行した。年度後半には振動非断熱性を直接取り入れる事のできるプログラム・コードを用いて、非平衡統計力学的見地から見た理論的枠組みの妥当性を数値的に吟味した。本研究で得られた成果を数理解析研究所研究会での依頼講演や第73日本化学会秋季年会などで報告した
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