研究概要 |
側鎖のβ-位にカルボニル基,水酸基,アルコキシ基,アセトキシ基等の官能基をもち,芳香環のオルト位にメチル基,エチル基,イソプロピル基等のアルキル置換基をもつ種々の芳香族ケトンを合成し、それらの光化学反応および生成物の化学的挙動を検討した。 (1)β-位にケトン基やエステル基をもつ化合物の光照射では,ベンゾシクロブテノールが収率よく生成し,その熱分解反応によりベンゾシクロブテノンが容易に合成できることを見いだした。 (2)β-位に水酸基やアルコキシ基をもつ化合物の場合には,光照射により芳香族ケトンの酸素原子がγ-水酸とβ-水素を競争的に引抜き,ベンゾシクロプテノールとシクロプロパン-1,2-ジオールまたは2-アルコキシシクロプロパノールが生成した。 (3)水酸基やアセトキシ基をもつ化合物の光照射からは,ジアステレオマ-の関係にある2種のベンゾシクロブテノールが単離された。本反応で得られたベンゾシクロブテノールは150℃前後でジアステレオマ-間の相互変換が起こる。 (4)β-位に水酸基やアセトキシ基をもち,α-位に2つのメチル基をもつオルトアルキルアリールケトンの光照射で得られたべンゾシクロブテノールを酸存在下で加熱するとイソプロピリデンベンゾシクロブテンが好収量で生成した。 (5)オルト位にイソプロピル基をもつ芳香族ケトンの光照射では,2,2-ジメチルベンゾシクロブテノールが得られ,その熱分解反応では立体特異的なC-2メチル水素の転移が起こり,イソプロピリデン基をもつ芳香族アルコールが得られた。 (6)1-(2^1,4^1,6^1-トリアルキルフェニル)-2-メチル-1,3-ジケトンは溶液中エノール体として存在する。このようなエノール性1,3-ジケトンと一重項酸素との反応は溶媒極性の影響を受け,異なる立体配座の2種のペルエポキシド中間体を経て進行することを見いだした。
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