研究概要 |
1.(1RS,3SR)-3-フェニル-3-(1,1,3,3-テトラメチル-4-オキソ-4-フェニルブチル)ジチイラン1-オキシド1を光学活性カラム(CHIRALPAK AD)を用いた高速液体クロマトグラフィーにより光学分割した。旋光度の測定から保持時間の短いものは(-)-体、保持時間の長いものは(+)-体であることがわかった。対掌体のそれぞれから得た単結晶のX線構造解析を行い、(-)-体は(1R,3S)-体、(+)-体は(1S,3R)-体であることを明らかにした。 2.ジチイラン1-オキシド1の光学活性体のラセミ化(酸素原子の隣の硫黄原子上への転位)の速度論について調べたところ、このラセミ化が可逆一次の速度式に従うこと、その速度定数に濃度効果、溶媒の極性効果がほとんど観測されないことがわかった。Eyring Plotから、活性化エンタルピーは24.3kcal mol^<-1>、活性化エントロピーは-2.0euであった。以上のことから、このラセミ化反応は、まず硫黄-硫黄結合が均等開裂し、次いで1,2,4-オキサジチエタン中間体または遷移状態を経由して、再び1に戻る機構であると結論した。 3.もう一方のジチイラン1-オキシド、(1RS,3RS)-体2についても、同様に光学分割を行った。2の光学活性体は1,2-ジクロロエタン中、30℃で2日間観察したが光学純度は低下せず、この条件下ではラセミ化は起こらないことがわかった。また、2から1への異性化は、ラジカル禁止剤である1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジルの存在下で抑えられたことから、不純物として含まれるラジカル種を触媒として起こることが明らかにされた。また(-)-2は(1S,3R)-1に、(+)-2は(1R,3S)-1に特異的に異性化することから、(-)-2は(1R,3R)-体、(+)-2は(1S,3S)-体であると推定した。
|