フェナントロリン核を有するカテナセン(仮称)を合成する目的で、初期の計画に従って、2、9-ジクロロフェントロリンを合成しこれを金属リチウムとの反応によりジリチウム体とし芳香族アルデヒド体との縮合反応等を経て骨格の半分を合成する目的でこの反応を行ったが、リチウム体の生成が確認できなかった。そこで方法を変えて、2、9-位にホルミル基を有する化合物から合成を行う事とした。先ず、1、10-フェナントロリィンにメチルリチウムを反応させ、活性二酸化マンガンで酸化を行うと2-メチル-1、10フェナントロリンが収率98%で得られた。同様な操作をこの2-メチル体に行ったところ、2、9-ジメチル置換体が収率99%で得られた。このジメチル体を二酸化セレンで酸化すると2、9-ジホルミル-1、10フェナントロリンが71%の収率で得られた。このジホルミル体にオルトブロモトルエンのグリニヤール試薬を反応させたところ、期待した2、9-ビス(オルトトリルヒドロキシメチル)-1、10-フェナントロリンではなく更に酸化の進んだ2、9-ビス(トリオイル)体が20%の収率で得られた。このジケトン体を硫酸中で種々の条件を用いて脱水閉環反応を行ったが構造不明物のみを与えた。また亜鉛を触媒とするエルブス反応を行ったが目的物は得られなかった。そこで、ジケトン体をNaBH^4により還元したところジオール体が23%の収率で得られた。現在、このジオール体の脱水閉環について検討中である。尚、科研費で購入した中圧型の液体クロマト装置は各段階の生成物の単離精製に用いている。
|