共役芳香環でカナテンを形成する(仮称)カテナセン化合物の合成とその性質に関する研究を行った。所期の目的のために数種類の合成反応を行ったので報告する。 カテナセン(仮称)の合成のために基本となる骨格形成には錯体形成におよる鋳型合成法が最も良いと考えられた。そこで基本となるフェナントロリンの各種誘導体の合成及び環形成に重要な置換基の変換に成功した。大きく2種類のカテナセンの合成を目指した。フェナントロリンを出発として2、9-位にメチル基を導入し、これを二酸化セレンにより酸化すると2、9-ジホルミルフェナントロリンが好収率で得られた。このジホルミル体に対し、共役系の伸長反応を各種試みた。先ず、グリニヤール反応による芳香環の縮合反応、次いでマクマリ-カップリング反応による共役系伸長反応を試みた。又更に環形成に重要な反応である各種Witting試薬との反応により二重結合の伸長反応を行い現在尚進行中である。又、第2の型のカテナセンの合成を目指した。10-トリメチレンフェナントロリン-2、9-ジオンを出発原料として、これをニトロ化、次いでアミノ化する。次にこのジアミノ体とフェナントロリン5、6-ジオンとの縮合により2個のフェナントロリンをフェナジン環で結合した化合物を合成した。次にジオンをオキシ三塩化リンとの反応により対照的に結合したテトラクロロフェナントロリン誘導体化合物の合成に成功した。これは3環性カテナセン化合物のタイプの異なる化合物類への重要な中間体である。又、新たにポリアザ芳香環の合成を目的として種々の合成反応を行い現在も進行中である。上記の合成反応に関連して本研究助成費で購入した中圧型のクロマト装置を用いて各化合物の分離精製が素早くしかもきれいに行えた。現在、何れの方法によっても目的化合物への誘導反応を行っている。又一方、以上の研究に加え共役系化合物の基本的な性質を知る目的で種々合成反応を行っているがこれらの研究、特に分離精製や同定に上記装置をも使用し、その成果は学術論文に発表している。
|