研究概要 |
最近、我々はケイ素、セレン組み合わせ試薬である1-セレノ-2-シリルエテン(1)とビニルケトン(2)やメチレンマロン酸エステル(3)とのルイス酸存在下での反応でケイ素の1,2-シフトを伴う[2+1]環化付加反応によりシクロプロパン化合物が得られることを見い出した。この反応はこれまでに全く見られなかった新しいタイプの反応で合成的有用性の検討が待たれている。生成するシクロプロパン化合物はセレン、ケイ素を含むいくつかの官能基で非対称に修飾されており、種々の官能基変換により有用な生理活性物質等への変換が期待される。 平成8年度の研究では、求電子試薬として反応性の高い,カルボニル基を3つ持つオレフィン(4),(5)を試みた。求電子オレフィン(4),(5)は一部は既知であるが、Wittig反応を用いた簡便な一般的合成法を開発し合成した。その結果、1,1-tri(alkoxycarbonyl)olefin(4)又は1,1-di(alkoxycarbonyl)-2-acyl olefin(5)と(1)とのZnBr_2の存在下での-30℃での反応でシス置換シクロプロパンを53-69%の好収率で立体選択的に与えた。生成物の立体化学は2D-NOESYによって決定した。また、本反応の立体選択性を、反応機構を分子軌道を用いて推察することにより説明した。生成したセレン、ケイ素を含むシクロプロパン化合物を、合成殺虫剤であるピレスロイドの有用な中間体に変換し、本反応の有用性を示した。
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