研究概要 |
最近、我々はケイ素、セレン組み合わせ試薬である1-セレノ-2-シリルエテン(1)とビニルケトン(2)やメチレンマロン酸エステル(3)とのルイス酸存在下での反応でケイ素の1,2-シフトを伴う〔2+1〕環化付加反応によりシクロプロパンが得られることを見い出した。この反応はこれまでに見られなかった新しいタイプの反応で合成的有用性の検討が待たれる。生成するシクロプロパンはセレン、ケイ素を含むいくつかの官能基で修飾されており、種々の官能基変換により有用な生理活性物質等への変換が期待される。 平成9年度の研究では、(1)とメチレンマロン酸エステル(3)との反応生成物シクロプロパンをアミノシクロプロパンカルボン酸のひとつであるコロナミン酸の誘導体とその類似物への立体選択的な変換に成功した。すなわち、(1)と(3)をZnI_2存在下で反応させ、シクロプロパン(3)とシクロブタン(4)との2:1混合物として84%の収率で得た。これを混合物のままLiAlH_4でエーテル中-78℃で反応させ、続いてNaBH_4と-30℃で反応させ、選択的に還元しモノアルコール(8)としたのち、TBDMS基で保護しシリルエーテル(9)とした。(9)をNaIO_4とTHF-H_2O中反応させアルデヒド(10)とした。この段階でシクロプロパンを完全に精製することができ、面倒な(3)と(4)の分離の操作を省略することができた。(3)と(4)の混合物からの(10)の総収率を算出すると約35%である。(10)をWittig試薬と反応させ、続いてジイミド還元した後、TBAFでシリルエーテル除去、NaIO_4,RuCl_3酸化しカルボン酸(11a,b)とした。(11a,b)をアジドに変換したのちCurtius転位でコロナミン酸誘導体とその類似物へ変換した。この合成ルートは置換アミノシクロプロパンカルボン酸の一般的合成法のひとつとなり得る。
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