研究概要 |
最近、我々はl-セレノ-2-シリルエテン(1)と求電子性オレフィンとのルイス酸存在下での反応でケイ素の1,2-シフトを伴う[2+1]環化付加反応によりシクロプロパンが得られることを見い出した。この反応はこれまでに見られなかった新しいタイプの反応で合成的有用性の検討が待たれる。生成するシクロプロパンはセレン、ケイ素を含むいくつかの官能基で修飾されており、種々の官能基変換により有用な生理活性物質等への変換が期待される。(1)とメチレンマロン酸エステル(2)との反応生成物シクロプロパンをアミノシクロプロパンカルボン酸であるコロナミン酸および2-アルキル置換誘導体、2,3-メタノアスパラギン酸誘導体への立体選択的な変換に成功した。すなわち、(1)と(2)をZnI_2存在下で反応させ、シクロプロパン(3)とシクロブタン(4)との2:1混合物として84%の収率で得た。これをLiAlH_4、続いてNaBH_4と反応させ、選択的に還元したのち、TBDMS基で保護した。さらにNaIO_4とTHF-H_2O中反応させアルデヒド(10)とした。(10)をWittig試薬と反応させ、続いてジイミド還元した後、TBAFでシリルエーテル除去、NaIO_4,RuCl_4酸化しカルボン酸(11)とした。(11)をアジトに変換したのちCurtius転位でコロナミン酸誘導体へ変換した。また、(1)とホスホノアクリル酸エステル(12)との反応生成物シクロプロパンを生物学的に興味が持たれるアミノシクロプロパンホスホン酸誘導体へ立体選択的に変換した。すなわち、(1)と(12)をSnCl_4存在下で反応させ、シクロプロパン(13)を95%の高収率で立体選択的に得た。(13)をNaIO_4と反応させアルデヒド(14)とした。(14)をNaBH_4でアルコールとし、続いて加水分解した後酸性にし、ラクトン(15)とした。(15)をアンモニアと反応させたのちエステル化し、生じたアミドをHofmann転位でアミノシクロプロパンホスホン酸誘導体へ変換した。これらの合成ルートは2-置換アミノシクロプロパンカルボン酸およびホスホン酸の有用な一般的合成法となり得る。
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