研究概要 |
不斉反応の未開拓領域である触媒的不斉ヘテロDiels-Alder(以下D-Aと略す)反応の開発研究において、ジエン成分に窒素原子を含むアザ1,3-ジエンを用いた効率的不斉ヘテロD-A反応が達成できれば、アルカロイドの基本骨格を有する光学活性複素化合物の有用な合成法となる。まず、アニシジンとグリオキシル酸エステルからp-メトキシフェニルイミン酢酸エステル1を合成し、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン2およびシクロペンタジエン3との反応をルイス酸存在下で検討した。その結果、1とジエン2との反応では、ZnI_2(10mol%)存在下室温で低収率(18%)ながら1のイミン部を親ジエンとする付加体4が選択的にえられた。一方、3との反応はZnI_2(10mol%)存在下-78℃で反応は進行し、1の芳香環がアザジエン成分の一部として機能し、3を親ジエンとするアザD-A反応付加体5が立体選択的に収率40%で得られた。つぎに、その不斉触媒化について検討した。すなわち、酒石酸由来のキラル1,4-ジオールおよびビナフトール由来のチタンブロミド触媒(TiBr_2-TADDOL6およびTiBr_2-BINOL7,10mol%)を用い、1と3との反応を種々の条件下で検討した。反応は-78℃においても速やかに進行するが(40-67%収率)、その不斉収率はほとんど認められなかった(最高10%ee)。現在、ビニルエーテル等を親ジエンとする1とのキラルチタン触媒6,7存在下での反応を検討すると共に、他のキラル配位子で修飾されたチタン触媒あるいはキラルランタニド触媒を用いる不斉反応についても検討している。さらに、あらたに1-アザ-1,3-ブタジエン基質として二座配位型N-スルホニル置換α,β-不飽和イミンの合成し、その不斉反応について検討している。
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