研究概要 |
トリス(2,4-ペンタンジオナト)マンガン(III)を酢酸中で攪拌するとジアセチルメチルラジカル、・CH(COCH_3)_2、が生成する。同様に、1,3-ジカルボニル化合物を酢酸マンガン(III)と酢酸中で攪拌すると相当する1,3-ジカルボニルラジカル、・CH(COR)_2、が生成する。これらのラジカルはアルケン類や芳香族化合物を親電子的に攻撃し、不加環化や置換反応を起こす。本研究では高圧力(5-200気圧)をかけることでEDA錯体(Electron Donor-Acceptor Complex)形成が容易になると考えられ、芳香族化合物との反応において予想どおりの立体選択的なラジカル反応が効率良く起こった。その結果、生成物の収率増大が観察された。しかし、アルケン類との反応では予想した収率改善は見られなかった。 課題実験反応は今回購入したステンレス反応管を用い、次のような条件下で行った。 1.反応温度はマンガン錯体の性質を考えて、高温(200,150,100,80℃)と低温(50,20℃)を用いた。 2.反応圧力は125,150,175,200気圧のそれぞれの条件を用いて行った。 3.高温の反応における圧力媒体としてアルゴンを使用した。その他に圧力媒体として酸素・一酸化炭素・二酸化炭素の使用も計画していたが、実際には行なう時間がなかった。 4.低温における反応でも圧力媒体としてアルゴンを使用した。 反応生成物は溶媒留去後、中圧および高速液体クロマトグラフ装置・キャピラリーガスクロマトグラフ装置、薄層クロマトグラフィー・フラッシュクロマトグラフィーで分離精製した。生成物の構造決定は、核磁気共鳴装置(60,90,270,400MHz)・赤外分光光度系・質量分析装置・可視紫外分光光度計・X線結晶解析装置を使って行なった。また、元素分析も行なった。 以上の実験で、高圧力下におけるこれらの反応の機構を考察した。また、収率改善の理由および立体選択性の向上を明確にするために、常圧下での同様の反応も行ない、比較検討した。
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