研究概要 |
分子性の有機磁性体を設計するためには,分子間の磁気的相互作用が,π-開殻分子間の空間配置とどのような相関をしているかが解ると都合がいい.そこで本研究では,開殻電子系分子が結晶中で様々な空間配置にある場合のモデルとなるような,二つの開殻電子系を分子内に二つ持つモデル分子を使って,開殻電子系の空間配置と磁気的相互作用の相関を(モデル分子内の相互作用として)定量的に見積もることを目的として研究を行った。 分子設計; 分子性結晶に頻出する積層形式を踏まえて分子設計を行い比較的堅固な分子骨格の中に二つの共役していない開殻π電子系を持つ分子を合成した。積層カラム間のモデルとしてトリプチセン-2,7-ジナイトレンおよび-2,6-ジナイトレン(系1),直交した空間配置のモデルとしてスピロビスフルオレン-2,2′-ジナイトレンおよびスピロインデンジナイトレン(系2),分子端のみ接近しているモデルとしてビス(ナイトレノフェニル)フルオレン(系3)を発生させ各々について極低温でESRスペクトルを測定した。 測定と解析;ESRを測定し,波形解析(三重項種,五重項種の区別)及びシグナル強度の温度依存性(キューリ-プロット)を調べた。 結論;(1)系1は,ナイトレンの置換位置によらず1重項基底状態であり,5重項と1重項のエネルギー差ΔE_<S-Q>は2,6体≪2,7体である。 (2)系2では,直交した空間的分子配置にも関わらず5重項が観測され,二つの開殻電子系間に相互作用があり,またキューリ-プロットの直線性から,ΔE_<S-Q>は非常に小さいと考えられる。 (3)系3では熱励起5重項が観測され,ΔE_<S-Q>=54cal/molである。
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