研究概要 |
SmI_2存在下、種々のジアルキルケテンとハロゲン化アルキルを反応させて生成させたサマリウムエノラートを、C_2-対称キラルジオール(DHPEX)を触媒にして不斉プロトン化する際に、DHPEXの共役塩基を有効に再生するためには、アキラルプロトン源をゆっくり加えながら反応を行わなければならない。これまでで、最も良い結果を与えたのは、トリチルアルコール(26時間、93%ee)である。これ以外の種々のアキラルプロトン源を用いて、反応時間の短縮と不斉収率の向上を計ったが、現在までにトリチルアルコールを凌ぐものは見つかっていない。例えば、2,6-ジクロロフェノールやベンゾピナコールでは不斉収率はそれぞれ82%ee(12時間)、68%ee(25時間)であった。トリチルアルコールのオルト位にフッ素の入ったものの合成には、未だ成功していない。 基質のジアルキルケテンについては、イソプロピルフェニルケテンでは量論的不斉プロトン化と同程度の%eeが得られたが、メチルフェニルケテンでは触媒的な反応では大幅に%eeが低下した。HMPAを大量に加えると若干%eeは向上したが、量論的反応と比べて低い値であった。触媒条件下でのこれらの違いが何によってもたらされるのか、現在のところ不明である。 今後は、引き続き触媒のキラルプロトン源を有効に再生できるアキラルプロトン源の探索を行うが、サマリウムエノラートの生成法を拡張して、α-ヘテロ置換ケトンとSmI_2の反応による方法(Molanderの反応)も取り入れる。また、キラルプロトン源もDHEPXに限らず、新しいものを合成する。このように、サマリウムエノラート、キラル及びアキラルプロトン源の種類を大幅に拡張することによって、触媒的な反応に適する組み合わせを見いだし、その構造的な特徴を把握することによって、この不斉触媒反応をコントロールしているファクターを明らかにする。
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