研究概要 |
α位にハロゲンや酸素官能基を有するα-ヘテロ置換ケトン類をヨウ化サマリウムで処理すると、サマリウムエノラートを経由して、還元反応が進行する。筆者は、この反応を2-ヘテロ置換-2-アリールシクロヘキサノンを基質として、C_2対称な光学活性ジオール(DHPEB)の共存下で行うと、高エナンチオ選択的不斉プロトン化反応が進行し、最高94%eeで相当するアリールシクロヘキサノンが得られることを明らかにしている。そこで、本反応の触媒的不斉プロトン化反応が高エナンチオ選択的に進行するか否かを明らかにするため検討を行った。 筆者は既に、ヨウ化サマリウムを用いて非対称ジアルキルケテンをアリル化し、サマリウムエノラートを生成させ、その反応溶液中で、キラルプロトン源をアキラルプロトン源で再生する触媒的不斉プロトン化反応を実現していることから、この方法論を応用して検討を行った。すなわち、2-メトキシ-2-フェニルシクロヘキサノンを基質として、0.2モル当量のキラルプロトン源の存在下、-45℃でヨウ化サマリウムと反応させた後、アキラルプロトン源として2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾールをゆっくりと加えた。しかし、複雑な混合物を与え、相当する生成物を単離することができなかった。そこで、基質を2-ブロモ-2-フェニルシクロヘキサノンとして、同様の検討を行ったところ、2-フェニルシクロヘキサノンを収率良く与えた。しかしながら、その光学収率は30%ee程度と化学量論的な反応と比較して、大幅に低下した。したがって、これまでの不斉プロトン化反応の触媒化の方法論をそのまま適用しただけでは、高エナンチオ選択的な不斉プロトン化反応を行うことは困難であり、ヨウ化サマリウムの触媒化とあわせて、今後の検討が必要であることが明らかとなった。
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