研究概要 |
筆者の研究室では、SmI_2を用いて非対称ジアルキルケテンをアリ化し、サマリウムエノラートを生成させ、これに触媒量のC_2対称なキラルジオールと反応系内で触媒を再生させるアキラルプロトン源としてトリチルアルコールを反応させることでサマリウムエノラートの触媒的不斉プロトン化反応を達成した。しかしながら、この反応では、トリチルアルコールを-45℃で26時間かけて加えなければ、高い光学収率(93%ee)で生成物を得ることができなかった。そこで、高度にフッ素化されたアルキル基を有するフルオラスキラルおよびアキラルプロトン源を用いて、フルオラスニ相系で反応を行い、キラルプロトン源の共役塩基からアキラルプロトン源によるキラルプロトン源の再生がフルオラス相(または界面)で効率良く進行すれば、効果的に触媒反応が進行するのではないかと考えた。このような考えに基づき、検討を行った。 THF中で,調製したサマリウムエノラートと触媒量のフルオラスキラルプロトン源を-45℃で反応させた後、フルオラスアキラルプロトン源のFC-72(ぺルフルオロヘキサン)溶液を一気に加え、液-液二相系で反応を行ったところ、最高60%eeで相当するアリルケトンが得ちれた(化学量論的な反応では66%ee)。また、キラルプロトン源としてC_2対称なキラルジオール(DHPEX)を用い、フルオラスアキラルプロトン源のTHE溶液を加えて検討を行った。その結果、驚くべきことに、以前の検討と同等の高いエナンチオ選択性(90%ee)で生成物を与えた。この系では、フルオラスアキラルプロトン源の添加により、反応混合物が懸濁することから、固-液二相系で反応が進行していることが考えられる。このように、サマリウムエノラートの触媒的不斉プロトン化反応においてフルオラス二相系での反応が有効であることが判明した。
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