我々は、ヨウ化サマリウムを用いて非対称ジアルキルケテンをアリル化し、サマリウムエノラートを生成させ、これに触媒量のC_2対称なキラルジオールと反応系内で触媒を再生させるアキラルプロトン源としてトリチルアルコールを反応させることでサマリウムエノラートの触媒的不斉プロトン化反応を達成した。しかしながら、この反応では、トリチルアルコールを-45℃で26時間かけて加えなければ、高い光学収率で生成物を得ることができなかった。そこで、高度にフッ素化されたアルキル基を有するフルオラスキラルおよびアキラルプロトン源を用いて、フルオラスニ相系で反応を行い、キラルプロトン源の共役塩基からアキラルプロトン源によるキラルプロトン源の再生がフルオラス相で効率良く進行すれば、効果的に触媒的不斉プロトン化反応が進行するのではないかと考えた。このような考えに基づき、検討を行った結果、サマリウムエノラートの触媒的不斉プロトン化反応においてフルオラスニ相系での反応が有効であることを明らかにすることができた。 また、サマリウムエノラートの生成法を拡張して、Molanderらにより報告された、α-ヘテロ置換ケトンとヨウ化サマリウムによる還元反応に着目し、この反応をエナンチオ選択的反応に変換するため、研究を行った。その結果、2-ヘテロ置換-2-アリールシクロヘキサノンを基質として、C_2対称なキラルジオールの共存下で反応を行うと最高94%eeで相当する2-アリールシクロヘキサノンが得られることを明らかにした。また、2-ヘテロ置換2-アルキルシクロヘキサノンを基質としても、同様に不斉プロトン化反応が進行することも判明した。さらに、これらの結果から、この不斉プロトン化反応の反応遷移状態モデルを提唱することができた。
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