本研究では、報告例の少ないテルル原子と窒素原子との渡環相互作用について調べるため、8員環状化合物の1位と5位にテルル原子と窒素原子とを導入したジベンゾテルラジシン骨格を用い、窒素の渡環相互作用による安定化からTe=S結合を有する化合物であるチオテルロキシドおよびTe=Se結合を有する化合物であるセレノテルロキシドを合成し、興味ある知見を得たので以下に略述する。 テトラブロモテルランとメチルアミンとの反応後、硫化ナトリウムでジブロモテルランの還元を試みたところ、非常に興味あることにチオテルロキシドが得られた。チオテルロキシドのテルル-窒素原子間渡環相互作用について調べるため、^<15>N(^<15>N=40%)で標識した化合物の^<15>N-NMRスペクトルを測定したところ、テルル原子と窒素原子とのカップリング(J_<Te-N>=37Hz)が観測され、テルル原子と窒素原子との渡環相互作用の存在が確認された。一方、セレノテルロキシドのX線結晶構造解析より、Te-Se結合は2.445Aであり、明らかに2重結合性を示している。チオテルロキシドはCF_3SO_3Meと反応し、チオアンモニオテルランを生成した。一般に、テルランはアピカルリガンドとしてハロゲンや酸素原子を有する物が多く、本研究で得られたアザテルランは新しいタイプの複合超原子価化合物である。
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