研究概要 |
(1)分子状酸素を可逆的に付加する鉄タンバクのモデルニ核鉄および二核コバルト錯体の創作:分子状酸素を可逆的に付加する鉄タンパクのモデル二核鉄および二核コバルト酸素錯体の創製を行った。常温で可逆的に酸素を付加する世界で始めての二核鉄錯体[Fe_2(Ph-bimp)(C_6H_5COO)(o_5)](BF_4)_2の合成に成功し,この研究は世界的に注目を浴びた。また、ジ-μ-スーパーオキソ二核コバルト錯体[(Me_3-tacn)_2Co^<111>-Co^<111>-(μ-OH)(μ-O_2)_2](ClO_4)_3が得られた。この錯体は二個のスーパーオキソ架橋基からなる始めての錯体であり,その構造にみられる特徴から優れた酸化触媒能が期待され,今後の研究の進展が待たれる。 (2)酸素を付加する銅(I)錯体の構筑とそれらの酸化触媒特性:銅(I)錯体および非対称二核銅(II,II)錯体の合成と酸素との反応性が調べられた。さらに,[Cu(N_4-Me_3)py)]^+および[Cu(N_3-Me_2)pybn)は酸素と反応することによって、配位子の側鎖にあるメチル基がカルポン酸に酸化されることが分かった。一方,[Cu(H_2o)(tpa)]^+はNO_2 N_2oへ変換する際の還元触媒となり得ることが分かった。 (3)二核クロム(III,III),二核クロム(III)-ニッケル(II)および三核ニッケル(II,II)クロム(0)錯体の合成と金属間に働く交換相互作用の解明およに分子強磁性開発の可能性を探る:[(phen)_2Cr(OH)_2Ni-(L_2)](ClO_4)_3(L_2:2,2,2-tet,3,2,3-tet,cyclen,tpa,Me-tpaおよびMe,-tPa)および[(Me-phen)_2NiCr_2O_7(dmf)]_nが合成され,ニッケルとクロム間に働く磁気的相互作用を系統的に調べた。現段階では,分子磁性体となり得る具体的な物質は得られなかった。しかし。得られた結果は、分子磁性体開発の指針に対し将来の貴重な基礎資料となるであろう。 (4)ウレアーゼのモデル錯体としての二核ニッケル(II,II)の創作:「Ni_2(Me4-tpdp)(CH_3COO(ClO_4)(CH_3OH))^+および[Ni_2(Me_4-tpdp)(CH_3COO)(urea)]^<2+>が合成され,構造が解析された。これらの錯体はウレアーゼの金属中心のモデルとなり得るものである。併せて,[Ni_2(Me_3-tpa)_2(OH)_2]^<2+>が合成され,これは過酸化水素水と反応すると[Ni_2(Me_3-tpa)_2(O)_2]を生成した。これらはオキシゲナーゼのモデルとなり得るものとして注目されている。 (5)リン酸エステル加水分解酵素のモデル錯体としての二核亜鉛(II,II)の開発:[Zn_2(Me_4-tpdp)-(HOCOO)]^<2+>,[Zn_2(Me_4-tpdp)(CH_3oCOO)],[Zn_2(Me_4-tpdp)(OH_2)]^<3+>,[Zn_2(Me_4-tpdp)-(BNP)]^<2+>(BNP:Bis(P-nitrophenyl)phosphate)。[Zn_2(Me_4一tpdp)(NPP)]^+(NPP:p-nitrophenylphos-Phate)が合成された,これらは加水分解酵素のモデルとなり得るものとして注目されている.
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