研究概要 |
テクネチウムおよびレニウム放射性同位体標識医薬品の合成を念頭において,テクネチウムおよびレニウム錯体の配位子置換反応を平衡論的および速度論的に検討した。 1) へキサキス(チオウレア)レニウム(III)錯体の加水分解反応機構 レニウム(III)錯体合成の出発物質としての可能性を確立するために,ヘキサキス(チオウレア)レニウム(III)の加水分解反応機構を分光光度法により速度論的に検討した。レニウム(III)錯体は,pH3-4の間では,加水分解と過剰に存在するチオ尿素による配位との間で平衡が成立しているが,最終的には加水分解反応によりレニウム-チオ尿素錯体は分解することが確かめられた。 2) へキサキス(チオウレア)テクネチウム(III)とDTPAとの反応機構 テクネチウム(III)ーアミノポリカルボン酸錯体合成のための一連の研究において,ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を配位子として選び,ヘキサキス(チオウレア)テクネチウム(III)とDTPAとの反応を速度論的に研究した。反応の律速段階を特定し,それらの速度定数を求め,これまで行ってきたEDTAおよびHEDTAとの配位子置換反応機構と比較検討した。テクネチウム(III)-DTPA錯体の生成反応においては,EDTAおよびHEDTA錯体生成の反応と比べて,反応速度定数は小さく,DTPAの立体構造がテクネチウム(III)-DTPA錯体生成に著しく影響していることを見出した。 3) ビス(アセチルアセトナト)ニトリドテクネチウム(V)の塩基加水分解反応機構 錯体k学的に興味がもたれているビス(アセチルアセトナト)ニトリドテクネチウム(V)の塩基加水分解反応機構をアセトニトリル中で速度論的に研究した。水酸化物イオンの濃度が低いところでは,まずニトリド錯体のアセトニトリルによる加溶媒反応が起こり,アセチルアセトンイオンを放出し,その後水酸化物イオンがさらにニトリド錯体を攻撃して残っているアセチルアセトンイオンを解離させるという反応機構を確立することができた。また系の吸収スペクトル変化の解析により,フリーのアセチルアセトンイオンは水酸化物イオンにより分解されるということも確かめられた。
|