アスコルビン酸オキシダーゼによって代表されるマルチ銅タンパク質の活性部位をモデル化した3核銅(II)錯体の合成と構造・性質などに関する研究が多くはないがいくつかなされてきている。 私共はこれまでタイプIII銅タンパク質のモデルとしての複核銅(II)錯体あるいはそれらに関連したニッケル(II)錯体の合成、構造および性質について研究を進めてきた。それらの基盤の上に、今回はオキシム陰イオンとアジ化物イオンまたは水酸化物イオンで橋かけした3核銅(II)錯体の合成を新しく行った。また、得られた錯体についてX線結晶構造解析を行い、錯陽イオンの構造を明らかにした。銅(II)イオン3個は直線上に配列し、それらはオキシマート(C=N-O)とアジ化物イオン(エンドオン型)または水酸化物イオンで橋かけしており、銅(II)の3つの配位平面は同一平面に近いかたちをとっている。その結果、隣接した銅(II)イオン間には極めて強い反強磁性的相互作用が働いていることが判明した。 また、二核配位子N、N、N^1、N^1-テトラキス(1-(エチル-2-ベンズイミダゾリ-ル)-2-ヒドロキシ-1、3-ジアミ)プロパン-2-オールと酢酸イオンを含む複核ニッケル(II)錯体の合成と構造を明らかにしたので、今後その骨格を銅(II)に適用し、3核錯体を合成したい。
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