研究概要 |
研究計画の3つにそって実施した. 1.配位子脱水素反応へ及ぼす配位子及び配位構造による制御:新たに3座配位子として働くトリアミン類を採りあげトリシアノトリアミン鉄(II),鉄(III)錯体を調製し,それらの構造を明らかにした.とくにジピリジルメチルアミンを用いた場合merとfacの鉄への配位様式によって前者では容易に脱水素反応が進行するのに対し後者では進まず,この反応が強く立体規制を受けていることが判明した. 2.ブレオマイシンモデル鉄錯体の構造・反応性:制ガン剤ブレオマイシンの鉄イオンに配位し酸素を活性化する部位のモデル錯体をとくに多メチル化による薬剤の耐酸化性向上を企図して合成し,鉄,銅,亜鉛イオンの配位した錯体として構造・反応性を検討した.多メチル化によって錯体構造が変化し,銅,亜鉛錯体では5配位錯体を形成するが四角錐構造から三角両錐型への移行が認められた.しかし,メチル化によって酸化能は低下した. 3.鉄に支援されるニトリル等の鉄・配位子間架橋反応:1,3-ジイミン部分を含む4座配位子を考案し,この鉄(II)錯体が種々のニトリルと室温で反応しニトリルのC≡N結合が1,3-ジイミンの中央の炭素原子と鉄に架橋し新規な5座配位子をもつ鉄錯体を生成することがわかった.この反応はニトリル一般に対しておこり,新規な錯体群が構築できる.さらに生成したニトリル付加錯体と過酸化水素よりヒドロペルオキシドを介する位置選択性を示さないDNAの酸化分解が起こることがわかった.
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