排気ガス、特にヂ-ゼルエンジン用排気ガスの浄化触媒は早急な開発が望まれており、その設計に資する機構の研究も重要である。金属触媒を用いた場合の作用モデルとして、6核ルテニウムカルボニルクラスターとNOガスの反応を詳細に検討した。中性NO分子が3電子供与性であるため、NOガスとカルボニルクラスターの反応は通常金属骨格の分割をひきおこして錯体生成物は得られていなかった。本研究では骨格の強化が期待できるカルビドカルボニルクラスターを用いて新規な8種類の錯体の単離と構造決定に成功し、それらの関係を明らかにした。基本となる-2価の6核ルテニウムカルビドカルボニルとNOの反応では1個のCOと共に負電荷が一つとんだレドックス反応がスムーズび進行し、6核金属骨格を保ったままNOを1個配位した-1価クラスターを得た。更にNOガスを加えると核の縮小を伴い、5核中性クラスターにNOとNO2が配位した錯体を生成する。予めアリル基を配位した-1価の6核クラスターとNOの反応では上と同様に骨格を保持し、NOがCOと負電荷を置換する。更にNOガスを加えるとアリル基と2個のNOおよび1個のNO2を配位した5核クラスターに変化する。これら錯体の構造は全てX-線解析により決定し、核縮小を伴う変化、NO2の生成における酸素原子の由来、さらに固体金属表面での反応にたいするモデルとしての位置づけ等について考察した。 上で得られた、アリル基とNOをもつ6核ルテニウムカルビドカルボニル錯体ならびにNOの代りにSO2を配位した錯体の温度可変NMRによってあたかもアリル部分がフラクショナルな挙動を示す様なスペクトルが得られた。これはNOまたはSO2分子が金属骨格上を動き回ることによって生じる現象であることを明らかにし、活性化パラメーターを決定した。NOやSO2分子が金属表面を移動するモデルとして初めての例である。
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