昨年度の研究において、Me_4N[Ni(dmit)_2]_2等の金属-絶縁体転移を研究したが、その結果を受けて、本年度においては(Me_2DCNQI)_2Li_<1-x>Cu_x塩の研究を行った。 この系の塩のうちx=0のLi塩は、一次元導体であるのに対し、x=1のCu塩は三次元金属となることが既にわかっている。本研究ではx=0近傍の物性に特に着目し、電気抵抗および光反射スペクトルに関する詳細な実験を行った。その結果、電子相関の影響で生じた4k_F電荷密度波の準粒子励起による遷移、および4k_F電荷密度波の位相振動によると考えられる遷移、を室温で観測することに成功した。これらの遷移、および電気抵抗の温度依存性をそれぞれのxに関して詳細に調べたところ、x〜0近傍の電気伝導度は、電荷密度波によるものであるということが判明した。 これらの結果から、密度波の標準的なモデルが電子相関によって生じる金属-絶縁体転移を理解する上でも、有用であることが判明した。これらの結果は、現在投稿準備中である。 またこれらの研究と平行して、二軌道型分子性伝導体の電子構造に関する研究、新規な分子性超伝導体(TMET-STF)_2BF_4に関する研究を行った。
|