最終年度までの研究で、研究課題に関連して以下の成果を得た。 i) 2バンド系に関する理論的な研究 高伝導性金属錯体結晶を構成する金属錯体分子の電子構造を、2バンド系という立場から扱い、金属-絶縁体転移等を、理論面から研究した。(論文3) ii) Me_4N[Ni(dmit)_2]の金属絶縁体転移の研究 高圧下で超伝導転移を示すMe_4N[Ni(dmit)_2]の金属-絶縁体転移を、単結晶磁化率測定、電気抵抗測定により調べた。その結果、常圧下の基底状態が、スピンギャップが生成した状態であることを見出した。ちなみに、高圧下で超伝導性を示す有機導体は、常圧下では、反強磁性基底状態になることが常識とされており、本研究での成果は、それらに対する反証という点で重要な意味を持つ。(論文1) iii) (Me_2DCNQI)_2Li_<1-x>Cu_x塩の金属-絶縁体転移の研究 上記物質に関する、電気抵抗測定、光反射スペクトル測定、磁化率測定、ラマンスペクトル測定を行った。その結果、電子相関の影響で生じた4k_F電荷密度波の準粒子励起による遷移、および4k_F電荷密度波の位相振動によると考えられる遷移、を室温で観測することに成功した。また、x=0.14を境として、室温における光スペクトル、低温の電気抵抗温度依存性、低温の磁化率温度依存性が、変わることを見出した。(電気抵抗測定、光反射スペクトルに関しては論文5[印刷準備中]参照。その他は現在投稿準備中)
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