研究概要 |
本年度の研究によって、1)マトリックスとそこに存在する小分子の間に強い相互作用が作用する場合、小分子の凝集と、マトリックス鎖自身の凝集は強くカップルしていること、2)その凝集過程においては、マトリックス内に独特の凝集パターンを形成すること、などを明らかにすることができた。 n-イソプロピルアクリルアミドゲルの転移的体積変化・体積相転移が、水分子のゲル鎖への脱吸着によって駆動されていることが明らかにされた。これは、ゲルの体積変化が、それを誘起する温度・添加物濃度変化を、水の化学ポテンシャルの変化として据え直すと、統一的に理解できることを示すことによって、明らかにすることができた。(発表論文J.Phys.Chem.100,1996,16282-16284,;Macromolecules1997)この事実から、体積相転移を実体的に説明する新たな理論を(Phys.Rev.E54,1996,2761-2765)構築することができた。 本科研費によって、既設の分光光度計を改良し、ゲル中での小分子の運動性・拡散定数を測定する方法(Bull.Chem.Soc.Jpn.69,1996,2173-2178)を確立することができた。高分子マトリックス中で、しばしば見られる、物質の異常拡散現象を実体論的に明らかにするための理論J.Phys.Chem.100,20164-20171)を構築した。 本科研費によって、購入された顕微鏡、改良されたテレビカメラ・ビデオシステムによって、ゲル内で物質が凝集する時形成される凝集パターンの動的過程を観察することができるようになった。イオン性ゲルに、Caイオン、ドデシルピリヂニウムイオンなどの、対イオンが吸着する時、形成される竹構造、管構造、泡構造とゲル内に蓄積される力学歪みとの間に、強い相関のあることが見出されている。(論文準備中)
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