研究概要 |
1.高分子錯体をグラフトした複合微粒子の溶液中での性質 粒径が120nmの単分散シリカコロイド微粒子に2,2'-ビピリジル基を含む温度応答性高分子(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド))を導入することによって調製した複合微粒子は、Fe(II),Co(II),Ni(II),Zn(II),Ru(III)などの金属イオンを定量的に配位することがわかった。とくに、これらの複合微粒子は、ポリマーの転移温度以上で粒子間配位子交換が起って凝集する現象が観測された。 2.有機溶媒中の複合微粒子の分散性と表面特性の関連性 上記コロイド微粒子を無水マレイン酸-スチレン共重合体で一次修飾し、次いで二次高分子の導入によって調製した複合粒子の有機溶媒中での分散性は、二次高分子の性質に強く依存した。ESR-スピンプローブ法による溶液中での複合微粒子表面の二次高分子形態の観測結果と微粒子の有機溶媒中でのζ-電位測定結果から、その複合微粒子の分散性は、二次高分子鎖どうしの低極性相互作用力とζ-電位に基づく静電的反発力の兼合いよって支配されることを明らかにした。さらに、二次高分子としてオリゴマーやポリマー電解質を結合することによって複合微粒子のゼータ電位制御を行い、その要因を明らかにした。 3.コロイド結晶の形成 ポリ(無水マレイン酸-スチレン)修飾シリカ複合微粒子(120〜300nm)は、有機溶液中で体積分率0.01〜0.02付近でコロイド結晶を形成することを発見した。この結晶は、この高分子に対して良溶液で、しかも高極性の溶媒(アセトン、アセトニトリルなど)中でのみ形成した。また、この複合微粒子の分散溶液中へ、塩を添加すると結晶形成における臨界体積分率が増大することから、粒子間の静電的相互作用に起因していることが示唆された。
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