Co/NiまたはFe/Niを触媒として、レーザー蒸発法およびアーク放電法で作製された単層カーボンナノチューブ(SWNT)の限外濾過膜を使った分離精製について、前年度、濾過膜の選定を行い、0.3μm程度の穴径を持つポリエーテルスルフォン製メンブレンフィルターが良い結果を与えることを見いだした。今年度は精製量の増大化を行い、精製された試料を用い各種物性を測定を行っている。精製量を増すためには、限外濾過を行う前にあらかじめ試料からある程度カーボンナノ粒子、触媒ナノ粒子等を取り除いておく必要がある。これは、試料中に多量のナノ粒子が存在すると、濾過膜にこれらのナノ粒子が蓄積されてしまい膜を失活させてしまうためである。ナノ粒子除去に関する前処理として1回に400cc程度の溶液を処理できる遠心分離機を用いている。遠心分離用の試料溶液は陽イオン系界面活性剤であるベンザルコニウム0.1%水溶液を用い、これにSWNTを含む試料を超音波振動を利用して分散させたものである。現時点において1回の精製処理行程で10〜30mgの純度90%以上のSWNTを得ることができる。さらに420℃の乾燥空気中で40分間熱処理を行った後、塩酸処理を行うことにより試料中に残存している強磁性粒子をかなり取り除くことができる。現在、精製した試料を用い、電子スピン共鳴、ラマン散乱、およびアルカリ金属等のド-ピングの実験を行っており、将来、SWNTへの水素貯蔵に関する実験も行うことも計画している。
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