研究概要 |
筆者は、ハロゲン化スズ(II)とハロゲン化テトラブチルアンモニウム(TBA)の複合試剤を用い、(E)-γ置換ハロゲン化アリルまたは(E)-γ置換アリルアルコール誘導体から5配位または6配位のアリルスズ化合物を生成し、(E)体を出発原料とした場合には、通常Barbier型カルボニル-アリル化では不可能なγ-syn選択性を発現させることを試み、以下のことを明かにした。(1)1-ブロモ-2-ブテンとベンズアルデヒドの反応をモデルとして、2価スズ(SnCl_2,SnBr_2,SnI_2)、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム(TBACl,TBABr,TBAI)、溶媒、反応温度などの反応条件を変えて、種々調べた。I-ブロモ-2-ブテン(1.5mmol)、ベンズアルデヒド(1.0mmol)、SnI_2(1.5mmol)、およびTBABrまたはTBAI(1.5mmol)をH_2O(0.1ml)を含んだTHFまたはDMI(3ml)中、室温で15〜20時間反応させるBarbier型反応条件で、80%以上の収率、ほぼ100%のγ位置選択性、85%以上のsyn選択性でアリル付加体を生成することができた。この反応条件により、種々の芳香族、脂肪族、およびα,β-不飽和アルデヒドのγ-syn選択的アリル化も可能になった。(2)1-クロロ-2-ブテン、および2-ブテン-1-オールは、SnCl_2ではパラジウム触媒なしでは全く反応しない。SnI_2-TBAI試薬を用いると、パラジウム触媒なしでもカルボニル-アリル化が起こり、しかも85%以上のγ-syn選択性を示すことがわかった。(E)-γ置換塩化アリルおよび(E)-γ置換アリルアルコールは合成が容易であり、それらを用いるγ-syn選択的アリル化も行うことができた。(3)パラジウム触媒を用いて炭酸(E)-2-ブテニルによるアリル化も同様の条件ではほぼ同じγ-syn選択性を示した。現在は、(2)および(3)の反応を種々の基質を用いて調べている。
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