本研究ではイオン交換樹ダイナミクスを明らかにするために、レーザー捕捉・顕微分光法、および共焦点レーザー顕微鏡を用いた三次元空間分解分光測定を行い、樹脂一粒毎の交換量のみならず、樹脂内でのイオン濃度分布とその経時変化、すなわちイオンの粒子内拡散過程を直接測定することを試みた。 イオンとしてはカチオン性蛍光色素ロ-ダミンB(RB)を、樹脂としては粒径15から20μm程度の強酸性カチオン交換樹脂を用いた。一定量の樹脂を所定濃度に調整したRB水溶液に浸漬し、一定時間毎に樹脂を取り出し、その一粒毎の分光測定を行った。共焦点レーザー顕微鏡による三次元空間分解測定では、樹脂内部からの蛍光強度プロファイルが得られる。浸漬直後では、RB蛍光は樹脂内部からは観測されず、樹脂表面層のみから観測された。浸漬時間が増すと共に、蛍光が観測される層は厚くなり樹脂内部からも蛍光が観察される様になった。樹脂全体から一定の蛍光強度プロファイルが観測されるためには一週間かかった。蛍光強度はRB濃度を反映しているので、これは樹脂内部でのRBの濃度分布とその経時変化、すなわち樹脂内拡散過程を直接観測していることとなる。得られた蛍光強度プロファイルから、樹脂表面からの球状拡散シミュレーションによりRBの粒子内拡散定数を求めることができた。さらに、粒子内でのRB濃度分布の経時変化は、一粒毎の吸光度にも現れ、先に求めた拡散定数を基に、吸光度の経時変化を説明することができた。 樹脂内拡散過程に対する定量的な評価法が確立されたので、樹脂またはイオンの種類、吸着条件等を変えるなど、測定対象を変え、イオン交換過程の詳細について検討する。
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