研究概要 |
イオン交換樹脂懸濁液導入/黒鉛炉原子吸光法による痕跡量の銅の定量 確立した方法は,1)銅イオンをピロリジンジチオカルバミン酸錯体として微細なイオン交換樹脂(粒径1〜10μm)にバッチ法で濃縮する;2)樹脂を孔径0.45μm,直径25mmのメンブランフィルターに吸引ろ過により捕集する;3)樹脂薄層を保持したメンブランフィルターを10-mlのビーカーに移し,0.1M塩酸1.0mlを加える;4)超音波照射により,樹脂懸濁液を調製する;5)樹脂懸濁液の20μlを黒鉛炉に導入し,銅を定量することに基づいている。微細なイオン交換樹脂を用いることから生じる特徴は以下のとおりである。1)微細なイオン交換樹脂は“水になじむ有機相"として,少量であっても迅速かつ効果的に疎水性錯体を濃縮できる;2)過塩素酸イオンの共存により凝縮し,ろ過により迅速に母液から分離できる;3)超音波を照射して,母液の50分の1〜100分の1程度の少量の溶液に懸濁させることにより,母液のマトリックスを原子吸光法に適したマトリックスへと容易に変換できる;4)樹脂懸濁液をオートサンプラーで分取できることである。確立した方法を海水,河川水,水道水中の銅イオンの定量に応用し,得られた結果を,5,10,15,20-テトラフェニル-21H,23H-ポルフィリン四スルホン酸を用いる固相吸光光度法の結果と比較した。両方法の結果はよく一致したことから,提出した方法には偏りがないことが確認された。 同様な方法で,水道水中のpg/mlレベルのカドミウム及び鉛イオンを定量し,再現性のある結果を得ている。現在これらの結果をとりまとめて,投稿準備を進めている。
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