研究概要 |
(i)ラット脳より抽出したグルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白を,単分子膜貼り合わせ法により作成した平面脂質二分子膜に包埋する際の融合確立の向上について検討した.その結果,ホルムアルデヒドの濃度勾配を融合の駆動力とすることで61%(n=133)の確率で応答を得た.これは,水素イオン濃度勾配を用いる従来法の確率(25%,n=81)に比べて著しく高い. (ii)グルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白が三種のアゴニスト(NMDA,L-グルタミン酸,L-CCG-IV)に対して示す化学選択性を,binding assayではなく,より生理的条件に近い指標(チャンネルを透過したイオンの全数)を用いて評価することを可能にした.すなわち,グルタミン酸受容イオンチャンネル蛋白の化学選択性の評価を,同一膜を用いて評価することにより,膜に包埋したレセプター数に依存しない新しい化学選択性の評価法を提案した(Biosensors & ioelectronics,印刷中). (iii)テトラフェニルホウ酸などのアニオン性サイトと種々のイオノフォアを同時に包埋した脂質二分子膜は,膜抵抗を低下させ,電位測定の確率を著しく高めることを見い出した.従来,膜が作成できたにもかかわず,膜抵抗が高いため(100ギガオーム以上)に約60%の確率でしか電位測定ができなかった.しかし,本研究では,電位応答型脂質二分子膜センサーを定量的レベル(100%の測定確率)に高めることができた.更に,アニオン性サイトと種々のイオノフォアを同時に包埋した平面脂質二分子膜はアルカリ及びアルカリ土類金属イオンに対して常にNernst応答を与えることを見い出した.これにより,定量的脂質二分子膜センサーの可能性が拓かれた(投稿準備中).
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