本年度は以下のような実績をあげることができた。 1)SPMEの基礎評価 SPME法は、これまでの有機溶媒による抽出とは異なり、溶融シリカキャピラリの表面に吸着媒体をコートし、この媒体に試料中の目的成分を濃縮、抽出するものであり、この媒体としてどんなものを使用するかが、分析目的に応じて変化してくることから、この媒体の吸着、抽出特性を基礎情報として取得する必要があった。分析対象として、環境水中の農薬を選び最適なSPME法を確立することができた。 2)キャピラリLCの基礎評価 分離手段として使用するキャピラリLCは、内径0.5mm以下のキャピラリに充填剤を詰めたいわゆるパックドキャピラリカラムを使用する。これは、固定相の選択の幅が非常に広いことによる。そして、上記の農薬の分離に最適なカラム媒体を基礎的な実験により選び出した。 3)SPME-キャピラリLCのインターフェイシング 1)、2)で評価された2つの方法を円滑に接続するインターフェイシングを検討した。このインターフェイシングでは、吸着媒体からの、分析目的の脱着操作が大きな問題であるが、ここでは、小量の媒体を必要とするが、本年度は10μLにまでこの体積を小さくすることができた。。この10μLを直接キャピラリLCに導入することにより、抽出操作では、一滴の溶媒を廃棄しないことが可能となった。一方、LCは、移動相の溶媒流速を1〜2μL/分であり、もし分離に30分要したとすると30〜60μLの溶媒を廃棄することとなる。一回の分析操作で60μLの溶媒の廃棄が必要となる本法は、現状の方法に比べてはるかに環境保全上有用な方法であることがわかるであろう。
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