今年度はmus-23遺伝子のクローニングを行った。mus-23遺伝子は連鎖群IIのflとtrp-4遺伝子のあいだにmapされた。コスミドライブラリーを使ってmus-23変異株のMMS感受性を相補するDNAを単離し、これをサブクローニングし、塩基配列を決定したところ、1578bpのORFを含んでいた。cDNAについても同様の配列決定を行ったところ、両者は一致し、イントロンの存在は見られなかった。予想されるタンパク質の分子量は約60KDであった。このタンパク質のアミノ酸配列と相同性を持つタンパク質をデーターベースで検索したところ出芽酵母のMrellがヒットした。Mrellタンパク質は酵母の組み換え修復タンパク質として知られており、主に二本鎖切断の修復に関わっている。mrell変異株とmus-23変異株とは極めてよく似た表現型を示し、mus-23遺伝子がアカパンカビの組換え修復遺伝子であることが明らかになった。酵母の発現ベクターを使ってmus-23遺伝子を酵母mrell株中で発現させたが、mrell株のMMS感受性は回復しなかった。これにより機能の上での相同性は示すことができなかった。mrellとmus-23との只一つの違いは紫外線に対する感受性でmus-23が高い感受性を示すのに、mrellは野生株と同様の感受性しか示さない。最近、アカパンカビには酵母とは異なる除去修復系のあることが明らかになり、この修復系はくみかえ修復系と共に働くことが予想されている。おそらくmus-23遺伝子はこの修復系と共同で働き、紫外線損傷の除去に関わっていると考えられる。
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