研究概要 |
塊状ハマサンゴのマイクロアトールをサンゴ礁のモデルと見なし,そこに成立する群集の発達にともなう共存種数の増加を大小のマイクロアトールで比較して「住み込み連鎖」仮説を検証するための野外調査(3年目)を継続した。久高島の礁池で、マイクロアトール上および周辺の多様な微生息場所における生物の生息状況を継続調査した。魚類については,前年度に引き続き2度調査し,魚類がその習性の違いにより,マイクロアトールの提供する多様な生息場所を利用し,複雑化してさまざまな生息場所を提供する大型のマイクロアトールほど季節を問わず種多様性が高く,群集構造が安定していることを確認した。フタモチヘビガイがハマサンゴに埋在することにより,サンゴ群体の表面が平坦化してサンゴに対するブダイ類による捕食圧が軽減されることが,季節を問わず安定して常に見られ,場所や海域の違いを越えて普遍的に見られることを実証した。他に行なった海藻類や無脊椎動物の調査からも,多種共存の維持促進機構としての住み込連鎖の妥当性を支持する結果が得られた。さらに,1988年の夏の異常高水温により,塊状ハマサンゴでも全体または部分的白化が認められたため,緊急課題として白化の状況とその後の追跡調査を行なった結果,白化したほとんどのハマサンゴ群体がおよそ半年で白化前の褐色の状態に戻ったことが観察された。マイクロアトール上の生物群集には,白化にともなう大きな変化は認められなかった。
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