研究概要 |
9月9-14日にかけて北海道室蘭沖でタッパナガ調査を行った.11,12日にタッパナガの発見があり,個体識別用写真撮影,行動パターンおよび移動の記録を行った.また,昨年に引き続き,吸盤タグによる潜水深度計の装着を試みたが,今回は装着することができなかった.個体識別用写真は,これまでに作成したデータベースに従って処理中である. これまでの個体識別写真の解析から,群れに含まれる,オトナオスとコドモ連れメスの割合の推定を試みた結果,オトナオスの割合は,群れ間で5から12%と変動が見られた.オスの割合が群れによって異なる傾向は追い込みにより捕獲された南方系のマゴンドウでも見られており,オトナオスが群れ間を移動することを示しているのかも知れない.コドモ連れメスの割合は,15から21%という値が得られた.この値は,コドモが平均授乳期間とされる2から3年の間,多くの時間を母親に付き添われて過ごすと考えれば,もっともらしい値である.次に同じような鞍状斑を持つ個体が同じサブグループにいる傾向があるのかを検討した.このことは,鞍状斑の形状が遺伝的に決まっているという仮定に基づいており,もし同じサブグループの個体の鞍状斑が似ていれば,そのサブグループは近縁個体の集団と考えられる.撮影された鞍状斑の4形質を記録し,サブグループの個体で比較を行ったところ,一形質を除き同じサブグループのペアが同じ形質を持っているという傾向は見られなかった.しかしながら,10組のペアの内,3組ですべての形質が同じである場合があった.それぞれの形質が独立であるとすると,これは非常にまれなことになる.また,2組の3頭連れで全く同じ形質が観察された.これらのことから,一緒に泳いでいる個体が似た鞍状斑を持つことは否定できないように思われた.
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