食物連鎖の長さは何で決まっているのか、どのように決まるのか、という問題に対しては従来様々な仮説が提出されてきた。代表的なものに、「栄養条件説」と「転換効率説」たがある。これらの説の有効性に関連して、理論的な見地から見通しの良い示唆を与える結果が寺本(1993)によって提出された。一方、「一次生産者による生産と分解者による分解の間のマッチング」-すなわち、両者の(種の入れ替わりなどによる)「共進化」-によって、生態系の物質循環が高まる機構が本申請者らによって理論的に示されてきた。しかし、これらの食物連鎖の動態と物質循環は無関係ではなく、物質循環を「ベース・サイクル」として、その上に一次生産者と分解者を起点とする2本の「食物連鎖タワー」が伸びる構造になっている。そこで、本研究では、食物連鎖の動態と物質循環の間の相互作用に基づいて、生態系の発達機構を明らかにすることを目的として理論的検討を行う。 最終年度に当たる本年度は、1年目に構築した基本モデルを用いて、以下の項目に重点をおき、理論的検討を行った。 1)食物連鎖の長さに関する「栄養条件説」、「転換効率説」の有効性と限界。 2)食物連鎖の伸長と物質循環の発達の相関。 3)「エネルギーピラミッド」実現条件。 4)生食連鎖と腐食連鎖の相互作用の影響。
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