研究概要 |
今年度は以下の2つの問題を中心に解析を行なった. 1.前年度に解析した石川県の砂丘地におけるクロマツ林でのマツ枯れにおけるマツノマダラカミキリの個体群ダイナミクスをもとにして,マツ枯れの空間的な伝播過程を数理モデルを用いて解析した.とくに,マツノマダラカミキリの近距離移動と長距離移動を取り入れた階層的拡散モデルを構築し,グローバルな空間的侵入過程の解析を行った.これにより,マツ枯れの侵入可能条件と分布域の拡大速度がカミキリの移動距離分布やマツの初期密度にどのように依存するかが理論的に導びかれた.その結果,カミキリの増殖率にアリ-効果があることが分かり,カミキリの分散阻止がマツ枯れ伝播の抑制に大きく影響することが判明した. 2.環境が人為的に分断化されている状況の中を生物が侵入したとき,それが定着して存続する条件,分布域を広げることのできる条件,ならびに,その空間的な伝播速度を求めた.とくに,環境が道路などにより帯状に分断された場合と格子状に分断された場合の2つを取り上げ,数学的解析とコンピュータシミュレーションを行うことにより,伝播速度に関する解析的な公式を導くことに成功した.
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