研究概要 |
文献調査および社会性昆虫を専門とする研究者からの情報収集によって,社会性(とくに社会性昆虫について)と共生関係の実態の把握に勤めた.現在進行中の調査項目は,社会関係については(a)ワーカーとソルジャーの分類群にわたる分布(b)巣あたりの個体数(c)生殖個体の数(c)分巣の方法である.(a)については,単数倍数性の遺伝システムをもつものは主にワーカー,単為生殖と倍数性の遺伝システムをもつものはソルジャーという明確な傾向が認められた.他の項目については解析中である. 共生関係については,(a)寄主と共生者のサイズの差(b)体内共生か体外共生か(c)垂直感染の程度(d)相手の存在の必要度である.(c)については,垂直感染に依存する分類群と依存しない分類群の特徴の差を検出することができた.データが十分そろってきたので、社会性と共生の共進化がどのような要因によって起こるのかを明らかにするための数理モデルの骨子を作成した. また,共進化の部分モデルに貢献できる数理モデルを開発することができた.社会性については,繁殖個体の数と繁殖個体間の繁殖量のひずみを説明するためのモデルを完成した(Tsuji and Tsuji,1996,1997).また,社会関係の構造を決定するための個体間の対立解消がどのようになされるかのモデルも進展させた(Yamamura and Jormalainen,1996).共生関係については,垂直感染をともなう共生関係が進化するための条件を明らかにし(Yamamura 1996),そのような共生者の獲得が進化的歴史においてどのような生物多様性を生みだしたかを展望することができた(Yamamura,1997).
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