今年度は、鹿児島県口永良部島にて、ハナミノカサゴの摂餌行動の個体変異の調査を継続した。摂餌行動は基本的に、餌の存在様式と対応はしているが、同じ餌に対する摂餌行動でもハナミノカサゴの大きさによって変異のあることが分かった。しかし、同サイズ個体でも個体毎に摂餌行動に変異が存在することも否定はできなかった。この変異がいかに具現するのは不明である。 また同島にて、魚食魚ヘラヤガラの摂餌行動も調査した。このヤガラは全長50cmと大型で、体模様から長期にわたり個体識別が可能である。調査した15個体は岸沿いに100-300mの行動圏を持っており、各個体の行動圏は大きく重複した。魚食魚である本種は、摂餌に際して他の魚種を利用した。予測されたとおり個体によって、ブダイ等の大型魚を頻繁に隠れ蓑にするもの、ハギ類の群を使うもの、岩が下など基質をよく利用するもの、と個体によりかなり変異があることが分かった。今年度も特に、餌魚の同定をしっかりさせこの調査を約6ヶ月続続させる予定である。 また同島で、4種のナワバリ性スズメダイが広範に共存する区域を見いだした。3つの永久調査区をもうけ、それぞれで4種のナワバリ地図を作った。その結果、4種のナワバリ分布は、ある程度は基質との対応性はあるものの、むしろ同種同士では、排他的に分布する傾向が認められた。調査時期は繁殖期が終わった後であり雌雄の判定は確かではないが、おそらく同種雄同士の摂餌ナワバリは隣接することなく分布しているものと思われる。このことは、同種雄間の配偶競争が、近縁種の共存を促進するとの仮説を支持するものと思われる。来年度は、繁殖期に配偶行動の観察とあわせて除去実験を行い、この仮説の検証を行う。
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