珊瑚礁魚類の個体変異が種間関係や共存様式に及ぼす影響

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08640811
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 幸田 正典 大阪市立大学, 理学部, 教授 (70192052)
• キーワード: 魚類群集 / 個体変異 / 捕食技術 / なわばり構造 / 共存機構 / 熱帯水域 / 多様性 / 近縁種

研究概要

今年度は、摂餌行動の個体変異については、魚食魚ハナミノカサゴ、ヘラヤガラについて行った。
前者では5つの摂餌行動が区別されたが同所的に棲む各個体はそれらのうち一つか二つを主に使用している傾向が見られた。また、個体のサイズも摂餌行動と関係が見られた。摂餌行動と餌魚種に対応があり、結果として本種は個体ごとに、摂餌場所、餌種を分割使用している。またヘラヤガラでは、水中から直接襲うほか、他の非餌魚種の大型単独個体や、藻食魚の混群、大きな岩を餌に近づくため利用することが確認され、各方法の利用頻度も個体によってかなり固定的である。共存するアオヤガラには、このような摂餌行動の個体での特殊化は見られず、多くの個体が水中から水平あるいは下に飛び出して摂餌した。ヘラヤガラのこの個体変異は「捕食共生」として働くものと考えられ現在資料を分析中である。沖縄県瀬底島では、ナワバリ性スズメダイの雄の縄張り構造が、近縁種共存に果たす役割についても継続調査した。ただ、昨年は水温上昇のため、多くの珊瑚の死滅もあり、十分な成果は得られなかった。この点は、今後も継続課題としていきたい。
また、過去二年間に得られた資料の分析、その成果の発表準備も行った。タカノハダイと2種のベラの随伴関係については、関与種を種単位で捉えるだけでは見いだせない、実に多様な関係が個体レベルで検討していくと見えてくることが明らかとなった。すなわち、随伴種、ホスト種の体サイズの組合せは全くランダムではなく、サイズ同調的に起こること、そしてこれはそれぞれの種の種内関係によりもたらされていることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Fujita H. & Kohda,M: "Timing and sites of parturition of the viviporous scorpionfish,Sebastiscus marmoratus" Environmental Biology of Fishes. 52. 225-229 (1998)
• [文献書誌] Kohda,M.: "Coexistence of permanently territorial cichids of the genus Petrochromis through male-matine attack" Environmental Biology of Fishes. 52. 231-242 (1998)
• [文献書誌] Matsumoto.K & Kohda,M.: "Inter-population variations in the moting system of a substrate-breading cichlid in Lake Tanganyika" Journal of Ethology. 16. 11-16 (1999)
• [文献書誌] Mboko,S.K & Kohda,M: "Description on piracy mating in a monogamous substrate breeding cichlid in Lake Tanganyika" Journal of Ethology. 印刷中. (1999)
• [文献書誌] Matsumoto,K,Kohda.M 他: "Size-dependent feeding association of two wrasses(genus Pseudo labrus)with the mormong,Goniistius zonatus" Ichthyological Research. 46(1). 57-65 (1998)