研究概要 |
捕獲調査を,福岡県那珂川町筑紫耶馬渓(1996年9月5-9日、標高150-210m、川沿い天然林)、福岡県那珂川町五ケ山(10月6-11日、標高360-400m、田畑及び村落)、佐賀県背振村田中(1997年1月30日-2月3日、標高550-600m、田畑及び村落)、福岡県福岡市早良区板屋(2月17日-19日、21日-25日、標高550-580m、田畑及び村落)、福岡県大野城市牛頚(3月1-6日、標高130-270m、川沿い植林地)の5カ所で実施した。捕獲固体について、麻酔後、各部計測、耳からDNA分析用のサンプル採取、個体識別用トランスポンダー挿入(板屋地区以降)を行い、覚醒後捕獲地点において放逐した。捕獲数はチョウセンイタチ雄4頭雌1頭、ニホンイタチ雄4頭であった。ニホンイタチの分析は標高によるのではなく、それぞれの河川の上流部でニホンイタチが分布する傾向がうかがえたが、分布要因を分析するためには今後背振山系において捕獲地域・捕獲数を増やすことが必要である。テレメトリーの調査はさらに分布調査を進めてから実施する予定である。 捕獲全個体の耳から細胞を採取し、また調査中に五ケ山で拾得した雌のチョウセンイタチの死亡個体から肝臓細胞を採取し、北海道大学大学院地球環境科学研究科生態遺伝学研究室に送付した。各サンプルは、mtDNAのcytb領域についてPCR法によるシーケンス分析が細田徹治、鈴木仁両氏によって行われ種が同定された。今後、核ゲノム内の分子系統用のマーカーの一つであるIRBPの遺伝子領域のダイレクトシーケンスを行い、種判別が可能かどうかを検討し、また二種間の交雑の有無、個体群内の変異について研究を進めるためにrDNAなどの核遺伝子の分析をおこなっていく予定である。
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