調査は、1996年9〜10月、1997年1〜3月、1998年1〜3月に、福岡県福岡市早良区板屋、同区荒谷、福岡県大野城市牛頸、同市原、福岡県筑紫野市平等寺、福岡県那珂川町筑紫耶馬渓、同町五ヶ山、同町上梶原、福岡県那珂川町及び佐賀県鳥栖市にまたがる九千部山山頂、佐賀県背振村田中、佐賀県三瀬村井手野の11カ所において実施した。各調査地では4または5晩、木製の箱罠を50mに1個置き、合計20個の罠を用いてイタチの捕獲を試みた。捕獲個体は、麻酔後、各部計測、耳からDNA分析用のサンプル採取、個体識別用トランスポンダー挿入を行い、覚醒後捕獲地点において放逐した。 16頭のイタチが捕獲され、DNA分析用のサンプルは、北海道大学地球環境科学研究科生態遺伝学研究室に送られ、細田徹治、鈴木仁両氏がmt DNAのcyt b領域のシーケンス分析によって種を同定した。その結果、外部形態(毛色、体重、尾率)からの種の判定が可能である事がわかった。個体間のDNAの変異については今の所2種とも検出されていない。捕獲個体の内訳は、チョウセンイタチ雄8頭、雌3頭、ニホンイタチ雄5頭であった。捕点を分析した結果、チョウセンイタチは平野部から、田畑があるところまでは山地部に分布を広げており、ニホンイタチは河川の上流部の田畑がない所に分布していたが、河川のない山頂部の天然林には分布していないことが判明した。このため、脊振山系におけるニホンイタチの分布はかなり限定されたものになると考えられた。 予定していた脊振山系以外の分布調査やテレメトリー方による生息地の利用様式の調査は行うことが出来なかったが、来年度以降これらの調査は実施する予定である。また、二種間の交雑の有無、個体群内の変異について研究を進めるためにrDNAなどの核遺伝子の分析をおこなっていく予定である。
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