本研究では、ホウレンソウ葉緑体のF_1のγサブユニットの大腸菌を用いた発現系を構築し、得られるリコンビナントγサブユニットを用いてサブユニット複合体の再構成系を確立することを目的とした。さらに、光化学反応系と共役したγサブユニットの構造変化が誘導する酸素分子全体、特に触媒部位を持つβサブユニットの構造変化と活性調節の関数を明らかにすることを目指した。平成8年度の研究で得られた成果は、以下の通りである。 (1) 平成7年度に我々が作成した「形質転換した大腸菌」を用いたγサブユニットの大量発現系により、γサブユニットを得て、これを再構成可能な状態で精製することに成功した。同時に、葉緑体F_1の活性を調節するもう一つのサブユニットであるεサブユニットについても、サブユニット単独の発現系を構築し、精製サブユニットを得ることができた。 (2) 得られたγサブユニットを別途に発現した好熱菌F_1由来のα、βサブユニットと再構成しサブユニット複合体を効率よく得られる効率よく得られる実験条件を確立した。その結果、充分量のキメラ複合体が得られるようになり、複合体をHPLC等によって高純度に精製することにも成功した。これらの成果は、日本生化学会第68回大会(札幌)にて発表し、現在Eur.J.Biochem.誌に投稿中である。 (3)安定な複合体を得られる実験条件が確立したので、この複合体に対するεサブユニットの調節効果の評価を行った。また、γサブユニットの活性調節に関わる部分に変異を導入を試み、この変異サブユニットの発現を行った。現在、このサブユニットを精製し、複合体の機能に及ぼす影響について評価している。
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