C4光合成回路を構成する遺伝子の一つであるPdk (ホスホエノールピルビン酸Piジキナーゼ)遺伝子は、C4植物であるトウモロコシばかりでなくイネ、C3植物にもその構造が類似した遺伝子が存在する。Pdk遺伝子は1つの遺伝子から2つの転写産物を産生する(葉緑体型、細胞質型)。イネの細胞質型Pdk遺伝子のプロモーター領域をGUS(β-グルクロニダーゼ)遺伝子とつなげたコンストラクトをトウモロコシプロトプラストに導入すると、高い活性がみられたのに対し、葉緑体型Pdk遺伝子プロモーターはイネ由来のものはトウモロコシ由来ものに比べ約4倍GUS活性が低かった。さらにトウモロコシの葉緑体型Pdk遺伝子プロモーター::GUSコンストラクトをイネに導入すると、GUSの発現は葉肉細胞特異的さらに光依存的に高い発現を示した。このことからC3植物からC4植物へはシス領域が進化し、イネ葉肉細胞にもトウモロコシのPdk遺伝子の細胞特異的、光依存的発現を引き起こすのに十分な転写制御系が存在していることを示している。これらの結果から、トウモロコシゲノムをイネに導入すれば、組織特異的に高い発現をすることが予想された。実際にトウモロコシのPpc(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)遺伝子をイネに導入した結果、野性株に比べ約30_7100倍もの活性をもつ個体が得られた。
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