植物の重金属耐性におれるフィトケラチン(PC)の機能についてはよく知られてるが、グルタチオン(GSH)からPCを合成する酵素(PC合成酵素)の働きと詳細な性質は不明のままであった。本研究では、トマト細胞のPC高生産株から複数のPC合成酵素アイソザイムの分離に成功するとともに、酵素の活性化に関する金属イオンの特異作用を検出することができた。これらは生体のPC合成調節と金属耐性の機構を解明する上で極めて重要な発見である。なお、複数酵素の分離のため、個々の蛋白質の構造解析、分布および発現機構については継続課題とした。 従来の抽出・硫安沈殿法では極めて低いPC_2のみの合成活性しか検出されなかったので抽出分離法に改良を加えた結果、細胞1g以下から短時間で高い酵素活性を検出する方法と高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により酵素と反応生成物であるCd-PCn複合体を完全に分離する方法を考案した。また、これらの技術により、従来一つとされていたPC合成酵素に複数の酵素が含まれていることが判明した。即ち、少なくともPC_4とPC_3を合成する酵素はHPLCで完全に分離することのできる別種の酵素あるいはアイソザイムであることがわかった。両酵素ともメタルフリーあるいは銅イオンでは活性がなくCdイオン特異的に活性化された。これらの酵素活性はCd耐性の低い野生型細胞では殆ど検出されないので、Cd耐性を左右する重要な酵素であると思われる。分離した2種のPC合成酵素のその他の反応特性についても詳しく調べた。
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