青色光は多くの生物において一つの重要なシグナルとして働き、様々な生命現象を引き起こすことが知られている。しかし、青色光がどのように生物によって受容され、また、その受容されたシグナルがどのように伝達されてそれらの生命現象が引き起こされるのか、青色受容体や情報伝達機構などの青色光受容系の分子機構はほとんど未解明である。 本研究では、ラン藻Synechocystis PCC6803を用いて青色光受容系の分子生物学的な解析を行うことを目的としている。この株は、光独立栄養条件および混合栄養条件下(グルコースを培地に添加し、連続光のもとで培養)で増殖できるラン藻であるが、この株を混合栄養条件下で培養した後に暗条件に移し、1日に1回だけ短時間(数分間)の青色光パルスを与えてやると従属栄養的に増殖するようになる。このことは、このラン藻に青色光受容系が存在していることを示している。 本年度は、このラン藻から青色光受容系が欠損している変異株の分離を行なった。野生株をエチルメタンスルホン酸で処理し突然変異を誘発させ、従属栄養条件下で青色光のパルスを与えても増殖できない変異株を19株分離した。これらの変異株は、光独立栄養条件および混合栄養条件下では野生株と同じように増殖するが、従属栄養条件下では野生株とは異なり、青色光パルスを与えても増殖できなかった。このことは、これらの変異株は青色光受容系に異常をきたしていることを示している。このラン藻は、外部からDNAを容易に取り込むことのできる形質転換型のラン藻の一種であり、分子生物学的な手法による解析が容易である。今後は、得られた変異株の相補を指標にして青色光受容系に関係している遺伝子群をクローニングし、解析していく予定である。
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