研究概要 |
渦鞭毛藻類に見られる眼点の多様性が,申請者が仮定するように本当に細胞内共生の多様性と関係があるのか否か,また,いろいろなタイプの眼点どのはそれぞれ微細構造的にはどのような特徴をもつのか,異なったタイプの眼点の分裂の機構はどのようになっているのか,などを明らかにするために本研究を進めている。 本年は最初の年度であるが,珪藻類を共生体として細胞内に取り込んでいるDinothrix paradoxaについて眼点の微細構造ならびに分裂の様式を調べた。眼点はいわゆるBタイプの眼点であり,3重の包膜に囲まれ共生藻に由来する葉緑体とは独立に渦鞭毛藻の細胞質に存在する。眼点は多層(3-4重)になった脂質顆粒によって構成される。眼点の分裂の様式は光学顕微鏡の下で連続観察によりおこなった。それによると,もとの眼点は分裂はおこなわず,新しい眼点はde novoに脂質顆粒が集合することによって形成されることが明らかとなった。この結果,新たに3重膜の起源は何か?脂質顆粒の起源は?といった疑問が湧いてくることになった。これらの点については電子顕微鏡を用いた解析により明らかにしていく予定である。また,3重膜に囲まれる眼点が葉緑体の退化したものだという仮説を確かめるために葉緑体DNAの痕跡が眼点細胞中にあるか否かをDAPI染色によって確かめた。しかしながら,この方法で検出できるオルガネラDNAは眼点中には見い出せなかった。
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