研究概要 |
本年度は渦鞭毛藻類に見られる眼点の多様性の実体を把握し,あわせて分子系統学的研究を用いることによりその起源に迫ることを目的として研究をおこなった。 微細構造学的な研究の結果,タイドプールに生育する渦鞭毛藻3種,Gymnodinium pyrenoidosum,Scrippsiella hexparaecingula,Scrippsiella sp.において眼点の構造が確認された。これら3種の眼点は葉緑体の中に脂質顆粒が並ぶタイプであったが,脂質顆粒が1重ではなく,2重または3重に並ぶ点が既知のタイプとは異なっていた。前2者が2重のタイプ,後者が3重のタイプであった。脂質顆粒の配列状態からこの眼点は1/4波長干渉型アンテナとして,光を反射する役割をもつものであることが推測された。本研究により渦鞭毛藻の眼点の多様性の幅がさらに広がったことになる。 また,18SrDNAを用いて渦鞭毛藻類の系統解析(36種を解析に用いた,そのうち9種がオリジナルデータ)をおこなった。得られた系統樹は,ヤコウチュウがもっとも根元に位置し,ゴニオラックス目クレードとペリディニウム目・プロロケントルム目・ギムノディニウム目クレード(PPGクレード)の大きく2つのクレードに分かれることが明らかとなった。この系統樹に眼点の分布を重ね合わせると,PPGクレードの方に含まれることが明らかとなった。現状では眼点保有種のデータが少なく,渦鞭毛藻における眼点の起源を特定するにいたっていない。今後,より多くの眼点保有種の解析が必要である。
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