研究概要 |
腺性下垂体は前葉と中葉からなる。このふたつの組織は,同じ発生学的な由来を持つにもかかわらず,視床下部からの上位調節の仕組みが大きく異なる。すなわち,前葉細胞におけるホルモンの合成・放出は正中隆起に終末する視床下部の神経分泌細胞で作られたホルモンにより,下垂体門脈系の血管を介して調節されている。一方,中葉では,視床下部の神経分泌細胞の軸索が中葉組織まで伸び,直接黒色素胞刺激ホルモン(α-MSH)細胞にシナプスを形成し,α-MSHの合成・放出を調節している。実際,前葉は血管系がよく発達している。中葉では血管はほとんどなく,かわりに多数の神経の進入が見られる。したがって,前葉には血管を誘導する因子が,中葉には神経を誘導する因子がある(あるいは逆に阻害因子がある)という仮説が考えられる。この課題を解決するためには,腺性下垂体組織から神経成長(阻害)因子や血管誘導(阻害)因子を同定し,その分子を顕微鏡下に捉えながら前葉と中葉組織の成り立ちを分子・細胞レベルから再考することが肝要である。本年度は,アフリカツメガエルの視床下部組織と中葉組織を組み合わせ,カエルの水掻きに移植すると,視床下部組織から中葉方向へ神経の軸索が伸びることを示す予備実験を発展させ定量・再現性のあるin vitroアッセイ系の確立を目指した.すなわち,アフリカツメガエルのオタマジャクシから視床下部の視交叉上核を摘出し,同ステージあるいは成体から下垂体中葉組織片を切り出し,視交叉上核と重ねてコラーゲンゲルの中に埋め込み,並置培養を行った。一定期間培養後,視交叉上核から伸びだした軸索数と長さを顕微鏡下で計測し,神経細胞の成長度合いを観察し定量を試みた。まだ,充分実験系が確立していないが,前葉と中葉の組み合わせによる違いが観察されたので,今後さらに培養条件を検討しアッセイ系を確立したい.
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