研究概要 |
高等植物では、分裂前期になると微小管が束化して分裂準備帯(preprophase band ; PPB)が形成される。この分裂準備帯が細胞周期における分裂の位置決定に重要な意味をもつと考えられている。現在までに、細胞周期進行を制御するprotein kinaseであるp34^<cdc2>homologが分裂準備帯に局在し、分裂準備帯の形成・崩壊過程のいくつかの段階に関与している可能性が示されている。p34^<cdc2>の活性化は、自己の14, 15位のアミノ酸残基T-14, Y-15のリン酸化-脱リン酸化によって制御されていると考えられているので、本研究では分裂準備帯に局在するp34^<cdc2> homologのリン酸化状態を調べることにした。T-14, Y-15を含むp34^<cdc2>の保存領域(GEGTYGVVYK)のペプチドを合成し、これを抗原として抗体を作製した。この抗体でタマネギ根端分裂細胞を染色したところ、分裂前期のほとんどすべての細胞で分裂準備微小管帯が形成され、p34^<cdc2> homologが分裂準備帯に局在しているにもかかわらず、この抗体では同時期の細胞で分裂準備帯を約45%しか認識できなかった。T-14, Y-15のリン酸化状態を変えた4種類のペプチド(前述)と抗体をそれぞれ反応させた後のウェスタンブロットおよび分裂準備帯の染色の結果、この抗体は、T-14がリン酸化し、Y-15が脱リン酸化した状態以外の3種類のリン酸化状態に対して高い結合性を示すことが分かった。これらの結果は、分裂準備帯にリン酸化状態の異なるp34^<cdcZ> homologが存在することを示唆している。
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